
ぽちぽち語っておりますが、僕はセンター試験の失敗により高校を卒業後、とある北海道の国立大学へと進学しました。同様の経緯で本州から移住してきた学生も多く、僕を含め、その半数は雪への耐性が0に近い人間たちでした。大学に入ると車通学の人もチラホラでてきますが、けっこうな確立で事故に遭っていたのを覚えています。
さて、雪道に強い車を考えたとき「4WDが有利」「FRが不利」など、漠然としたイメージがあると思いますが、これはエンジンの搭載位置と駆動輪の関係性から優劣が決められています。ではでは、今回は車の基本性能である「走る」「曲がる」「止まる」の3点に分けて、雪道との関連を分析をしてみましょう。
◆ 駆動方式によって雪道性能は違う

主な駆動方式は上記の5つです。下段のRRとMRは市販車では珍しい部類で、FRも徐々に数が減っているため、あまり馴染みのない駆動方式かと思います。きちんとした統計ではありませんが、おそらく国産車の80%以上は「FF」「4WD」が占めているのではないでしょうか。これら5つは、シンプルに書き表すとこんな感じになります。
- FF:前エンジン / 前輪駆動
- FR:前エンジン / 後輪駆動
- 4WD:前エンジン / 後輪駆動
- RR:後エンジン / 後輪駆動
- MR:中央エンジン / 後輪駆動
なかでもFFは、部品点数が少なかったり生産コストが低かったりなど、大衆向けに大量生産するのにうってつけな方式です。話が逸れましたが、これら5つ雪道性能を順位づけると、下のようになります。
4WD > FF > FR > RR > MR
「どうしてこのようになるのか?」を、車の基本性能である「走る」「曲がる」「止まる」の3点から解説をしましょう。
① 直進走行性能
直進走行にスポットを当てると、順位はこのようになります。
4WD > FF > RR > MR > FR
4輪が駆動する4WDは、FFやFRよりもエンジンが発生したパワーを多く伝えることができます。雪道に限らず、発進や直進安定性は4WDが一番高いことはいうまでもありません。しかし、ここで気になるのは、FFやFRなど2輪駆動のあいだでも優劣がつく点です。
実は、同じ2輪駆動でもエンジンレイアウトの違いによって、タイヤに加わるグリップ力は大きく変わります。一般的に、「FFよりもFRのほうが雪に弱い」と認識されていますが、これは重心位置の違いからくるのです。

FF / RR / MRは駆動輪が利きやすい

こちらは、エンジンレイアウトを「E」、駆動輪を「D」として、それぞれの位置関係の図です。エンジンは車の構成部品のなかでも随一の重量を誇るため、レイアウトによってグリップ力を大きく左右します。
FF、RR、MRは、それぞれ駆動輪の近場にエンジンが配置されているため、グリップ力を最大限活かすことができます。
FRは駆動輪が利きにくい

一方、FRは図のとおり、駆動輪とエンジンの距離がもっとも離れています。すなわち、重量物であるエンジンが駆動輪から遠くにあるため、後輪に荷重がかかりません。FFやRRよりもグリップ力が劣るのはいうまでもないです。
② 旋回性能
旋回性能にスポットを当てると、順位は変動してこのようになります。
FF = 4WD > FR > RR = MR
ポイントとなってくるのは前輪のグリップ力です。駆動輪が「4輪なのか?/2輪なのか?」は関係ありません。4WDが安定するイメージがあると思いますが、それは駆動力というより、車重の話です。
4WD / FF / FRは操舵輪が利きやすい

4輪駆動、前輪駆動、後輪駆動に関わらず、前輪は全車種で操舵の役割を担っています。つまり、フロントエンジンの上記3方式は、前輪にグリップが働くため、コーナーで安定性しやすいのです。
ただし、FRは後輪駆動ですから、くれぐれも慎重に舵を切る必要があります。急ハンドルをしていまうと、お尻を振ってしまい、いわゆるドリフト状態になってしまいます。
MR / RRは操舵輪が利きにくい

反対に、MRとRRは操舵側にエンジンがないことから、前足に踏ん張りが利きにくいです。ゆえに、雪道の旋回では不利といえます。後輪駆動ゆえハンドリングにも慎重さが求められるので、雪上ではかなり不利です。

③ ブレーキ性能
ブレーキ性能に関しては、駆動方式の影響が比較的浅いです。動力は駆動輪からしか伝わりませんが、ブレーキ制動力は駆動方式に関わりなく4輪に働きます。強いていうなら、優劣はこのようになるでしょうか。
RR = MR > 4WD = FF = FR
RR / MRは後ろ足が利きやすい

ブレーキをかけるとき、車体にはノーズダイブという現象が起こります。読んで字のごとく、フロントが沈み込む現象のことで、車体がつんのめっている状態とイメージしてください。物理学でいうところの慣性力によって引き起こされるもので、エレーベーターの上昇時、電車の停車時に感じる力が原因です。
さて、フロントが沈み込むということですが、これは言い換えると後輪が浮き上がることを指します。ノーズダイブ量が多いほど、後輪のブレーキ制動力が路面に伝わりにくくなるため、止まりづらくなるのです。
MRやRRがブレーキで有利なのはそのためで、重心が後ろにあることからノーズダイブ量が小さくなります。後ろ足が利くので、効果的にブレーキ性能を発揮できるというわけです。
4WD / FF / FRは後ろ足が利きにくい

フロントにエンジンを置くフロントヘビーなこの3方式は、ノーズダイブ量がRRやMRに比べて大きくなります。それだけ後輪が浮き上がるので、4輪に均等な制動力が働かず、止まりにくくなるということです。
ただし、先で4輪駆動も2輪駆動も影響はないと申しましたが、
エンジンブレーキを働かせれば、4WDはブレーキ制動力を高めることができます。シフトダウンによる減速力は当然駆動輪に働きますから、4輪駆動のほうが効果的に発揮でるのです。
結論:雪では4WDかFFがマスト
総合的に考えると、冒頭に登場したような順番になります。
4WD > FF > FR > RR > MR
日本の雪は水気を多く含みスリップしやすいため、冬シーズンに乗るなら4WDかFFがマストといえます。今やFRのモデルは少数派ですが、もし雪道を運転する機会があるのなら、とくに発進時とブレーキ時には要注意です。

あとがき
一口に4WDといってもメーカーによって千差万別で、場合によっては「A社のFFモデルは、B社の4WDモデルよりも安心して雪の上を走れる」ということもよくあります。例えば、北欧のVOLVOは雪道に強いメーカーとしてお馴染みですが、意外にもFFがラインナップの大半を占めているんですよね。
今回は、そういった複雑な部分を排除して、「雪道と駆動方式の関係」についてシンプルに語りました。そのため、かなりザックリした内容になっているので、あくまでも一つの指針としてお考えください。