シェアリングエコノミーという言葉が取り沙汰され、現代社会ではあらゆるモノを他社と共有するようになった。例えば、シェアハウス、民泊、レンタルファッション…など、挙げ始めたら枚挙にいとまがない。
僕は車が好きだ。新しい車種やモータースポーツはもちろん、今後の日本のモビリティがどう変化してゆくのかも気になるポイントである。今回は海外では加速度的に普及が広まっているライドシェアを例にとり、将来のモビリティについてお話していきたいと思う。
◆ 海外では普及が広まるライドシェア
アメリカのUberや中国の滴滴出行(ディディチューシン)をはじめ、諸外国ではライドシェアのサービスが急速に普及している。市場の将来性について次世代エネルギー産業を調査するResearch Station,LLCは、2018年に613億ドルだったライドシェアの世界市場規模は、2025年には2180億ドルまで急成長を遂げると予測した。
たしかに、アプリケーションを介して利用者と一般ドライバーを繋げるライドシェアは、需給状況に柔軟に対応でき、なおかつ遊休資産の有効活用も可能であるため、経済的・環境的なメリットが大きい。自動運転技術との相性も良く、次世代モビリティの在り方として最適といえるだろう。
◆ 海外に比べ一歩遅れる日本
しかし、ライドシェアの現状について我が国に目を向けてみると、他の先進国と比べて普及が遅れていると言わざるをえない。2017年に総務省が公開した資料によると、日本におけるライドシェアの認知度が15.6%であるのに対し、イギリスでは40.2%、ドイツでは47.4%、アメリカでは50.8%という数字が出ている。
また利用経験についても、日本が4.9%であるのに対し、イギリスが22.5%、ドイツが27.4%、アメリカが36.9%という調査結果だった。日本において普及が遅れているのは一目瞭然だが、この背景には2つの要因が考えられる。
要因① タクシー会社との摩擦
まず1つめの要因は、タクシーをはじめとする旅客自動車運送業との摩擦だろう。免許取得に多額の費用を投じたタクシードライバーが、二種免許を持たない一般ドライバーに利用者を奪われる恐れがあるのだから、看過できないのも無理はない。
一方で視点を変えてみると、高齢化に伴ってタクシー運転手が減っていることも事実だ。需給バランスを整えるためにも、ライドシェアサービスを効果的に運用することが求められる。
要因② 安全面における懸念
ライドシェア普及を阻むものとして、2つめは安全面の要因が考えられる。車両の適切な整備・点検の有無や事故発生時の責任問題、あるいは交通量の増加による道路状況の悪化など、保安上の懸念があるのだ。
この辺りは諸外国でも取り沙汰されたが、とりわけ日本は懐疑的な傾向がある。保守的な国民性からか、日本人は「企業が責任をもって提供するサービスの方が信頼できる」と考える消費者が多いのだ。
◆ 日本が普及を進めるには?
これらをクリアするためには、法の上でライドシェアをどのように位置付けるかがポイントとなるだろう。例えば、アメリカでは地方単位で法を整え、タクシー、ハイヤー、ライドシェアを明確に区別した。具体的には、多くの州や市ではハイヤーを事前予約による運営に限定し、営利目的のライドシェアはTNC(※)という形態に定めている。
また、ヨーロッパでは一般ドライバーによるライドシェアを禁止し、ハイヤー資格を取得したドライバーのみ営利目的のライドシェアを行えるようにしている。
※ TNC:Transportation Network Companies
出典: 運輸分野における個人の財・サービスの仲介ビジネスに係る国際的な動向・問題点等に関する調査研究 |国土交通省
あとがき
新経済連盟はライドシェアを導入した際の経済効果は約3.8兆円に上ると予測しており、一刻も早く法環境を整備する必要があると指摘している。
次世代のモビリティを見据えて、ライドシェア導入に向けた今後の動きに注目したいところだ。