日本が抱えるいくつかの問題のなかでも、アラサー男子的には「労働環境の整備」が一番気になる部分である。働き方改革が叫ばれて久しいが、なにかと空回っているように見えて仕方ないものだ。
そこで今回は趣向を変えて、「日本の労働環境は他の先進国と比較してどうか」について考えてみたい。比較対象に選んだのは、自動車をはじめ製造業が基幹産業である欧州「ドイツ」。ご存知かもしれないが、ドイツは労働環境が非常に充実していることから「労働先進国」とも呼ばれたりする。
生産性などは別の機会に触れるとして、この記事では労働時間に焦点を当てて僕なりに語ってみたいと思う。
◆ 日本より「20%」も短いドイツの労働時間
少し古いデータだが、2018年に労働政策研究・研修機構(JILPT)がグラフ1のようなレポートを公表した。2016年に経済協力開発機構(OECD)が集計したデータをもとに、JILPTが各国の労働環境について比較検討している。
グラフ1からもわかるように、日本の労働時間というのは先進諸国のなかでも比較的長いほうだ。その数字は年間平均で1,713時間(2016年)。改正労働基準法の施行(1988年)を皮切りにだいぶ時間は短くなったものの、依然として日本人は「働きすぎな国民」なのである。働いているのに、アメリカほど給与も高くないから悩みどころだ。
各国比較労働系の論文読んでるけど、ドイツ羨ましすぎだろ。なんだよ労働時間口座で帳尻合わせ。ふざけんなよ日本、なにが外から見えない職場の慣行って。
— Рюто Ёнэяма (@japboifucksall) December 5, 2019
一方のドイツは、労働時間が年々減っている。これは先進国でもかなりのもので、年間平均で1,363時間(2016年)という短さだ。日本を上回る工業大国として成っているにもかかわらず、労働時間は日本よりも約20%短い。
では、そんな「労働先進国」ともいえるドイツの取り組みについて見てみよう。
◆ ドイツでは「働きすぎ」を制度で禁止
1日に10時間以上の労働は罰金
しょっぱなから驚きだが、ドイツでは社員を働かせすぎると罰金が科せられる。管理職でない社員が1日に10時間を超える労働を強いられた場合、経営者には最大1,5000ユーロ(180万円相当)、もしくは1年以下の禁固刑をくらうのだ。
また、1日だけでなく6ヶ月の労働時間が平均8時間以上になることも禁じられているのだとか。会社員にのみ適用されるとはいえ、ここまで制度が厳しければ労働時間の短さもうなずける。
そして、ドイツにはもう一つ面白い制度がある。
残業したら後日早く帰れる仕組み
これは「労働時間貯蓄制度」と呼ばれている。名のとおり残業時間を繰り越すことで、次回以降の出社時にその分だけ早く退社できる制度だ。
たとえば、定時が17時のところ20時まで働いたとする。この3時間の超過分を繰り越すことで、翌日は定時の3時間前、つまり14時に帰ることができるのだ。
ぜひ日本にも導入してほしいところだ。続いて、休暇事情にも目を向けてみたい。
◆ ドイツの休暇事情について
100%の有給消化率で年間休日141日
JILPTのレポートから、休暇についてまとめられたグラフ2を抜粋してみた。色が3分割されており、左から「週休(ネイビー)」「祝日(ピンク)」「有給休暇(紫)」となっている。
日本の休日数が138.2日と見栄えがいいのは、ここに有給休暇(18.2日)も含めているからである。日本の有給消化率は50%と言われているので、実際には120日(土日祝)+9日(有給)の計129日が実際のところだろう。
ドイツだと
— まっつん@第二新卒ブロガー (@Nito_8meta1) July 4, 2019
・残業は1日2時間が限度
・2時間残業したら次の日2時間早く帰ってもOK
・労基のチェックが厳しく、破ったら厳しい罰則罰金
・有給消化率ほぼ100%
とからしいです。日本はクソクソクソおおお
Blogにまとめましたので明日の昼休みにでもみて下さいhttps://t.co/jC0ztjgEta
でだが、見出しにもあるようにドイツは有給消化率が100%の国なので、この数字通り141日きっちり休む。日本より、平均してざっと10日ほど休日が多いのだ。ただでさえ労働時間が短いのに羨ましい限りだ。
それも、有給休暇をつなげて取得することが当たり前なので、2~3週間の連休などもザラらしい。そりゃバカンスにも行くわな。
すでにこの時点でドイツの労働先進国ぶりが十分にわかったが、最後にダメ押しといこう。
有給休暇と病気休暇は別もの
ドイツでは有給休暇と病気休暇が明確に区別されている。つまり、体調を崩して出社できないときは病気休暇が適用され、有給休暇は “余暇のためだけ” にとるのが常識となっているのだ。
それも、病気休暇は1年で最大6週間ほど与えられていることが多く、給与も減額されることはない。実質的には有給休暇なのだ。もちろん、産休や冠婚葬祭にも寛容である。
日本では体調不良になったとき問答無用で有給が消化される。これが常識だと思っていたが、ドイツの事情を調べる中で僕は思わず膝から崩れ落ちた。
あとがき
さて、今回はドイツの働き方について焦点を当てて、いくつか解説をしてみた。できれば移住したいし、なんならドイツに生まれたいとさえ思った。
しかも、労働時間は短いのに生産性も高いときたものだ。というより、あえて短く働くことで効率を各段に高めているのだろう。
ドイツの生産性なんかについては、以下の記事でGDPや彼らのマインドについて触れているので、合わせて読んでもらえたらうれしい。